機械製図や建築製図において、寸法記入は正確な製作・施工を行うために非常に重要です。寸法が正しく記入されていなければ、設計者の意図が伝わらず、部品の不適合や施工ミスにつながる可能性があります。本記事では、寸法記入の基本ルールと注意点について詳しく解説します。
寸法記入の基本ルール
寸法記入はJIS(日本工業規格)をはじめとする国際規格に基づいて行われます。特に機械製図では JIS B 0001、建築製図では JIS Z 8311 などが適用されます。以下に、寸法記入の基本ルールを説明します。
寸法の要素
寸法記入には、以下の3つの基本要素が必要です。
- 寸法数値(例:50、100.5)
- 寸法線(対象の長さを示す直線)
- 寸法補助線(寸法線の端点を示すための補助的な線)
寸法数値は通常、寸法線の中央上部に配置されます。寸法補助線は対象の形状から適切な距離を空けて配置し、交差しないようにします。
寸法の配置
寸法は、図面全体が見やすくなるように配置しなければなりません。次の点に注意しましょう。
- 寸法は可能な限り外側に配置する
→ 部品の内部に寸法を記入すると、視認性が低下し、誤解の原因になるため。
- 必要な寸法のみを記入する
→ すべての寸法を記入すると、かえって混乱を招くため、製作に必要な最小限の寸法を記入する。
- 重複寸法を避ける
→ 同じ寸法を複数の場所に記入しない。
数値の表記方法
寸法の数値表記には、統一されたルールがあります。
- ミリメートル(mm)単位の場合は 単位を省略 する(例:100 ではなく 100mm と記載しない)
- メートル(m)やインチ(inch)を使用する場合は単位を明記する(例:1.5m, 2inch)
- 小数点は ピリオド(.)を使用 し、「,」(コンマ)は使用しない(例:100.5)
寸法記入の種類とルール
直線寸法
- 長さや幅などを表す基本的な寸法。
- 寸法補助線は対象のエッジや基準線から適切な距離を確保する。
角度寸法
- 角度を表記する場合、角度記号(°)を使用する(例:45°)。
- 円弧の寸法には、半径(R)や直径(φ)を明示する。
直径・半径寸法
- 直径は「φ(ファイ)」を用いる(例:φ50)。
- 半径は「R(アール)」を用いる(例:R25)。
- 球体の寸法は「Sφ」「SR」を使用(例:Sφ100 は球の直径100mmを示す)。
穴の寸法
- 穴の直径は「φ」で表す。
- 穴の位置を表す場合、中心からの座標寸法を記入する。
- 複数の同じ穴がある場合は「4×φ10」のように記載する。
寸法記入時の注意点
製造・加工を考慮した寸法記入
- 加工基準を意識し、測定しやすい基準から寸法を記入する。
- 過剰な寸法公差を避け、適切な許容差を設定する。
- 公差の累積誤差が発生しないように基準寸法を明確にする。
寸法の優先順位を考える
すべての寸法を記入するのではなく、重要な寸法を優先する。以下のような寸法が優先される。
- 機能上重要な寸法(例:取り付け穴の位置)
- 加工基準となる寸法(例:基準面からの距離)
- 公差管理が必要な寸法
誤解を招かない記入
- 寸法線や補助線が交差しないように配置する。
- 同じ長さの寸法を複数回記入しない。
- 必要な情報を明確に伝えるため、過不足なく寸法を記入する。
寸法公差と幾何公差
寸法公差の設定
寸法公差とは、製造時の許容範囲を示す値です。寸法公差には以下の種類があります。
- 一般公差(JIS B 0405などに規定)
- 個別公差(寸法ごとに指定)
例:
- 50 ±0.1 → 50mmの寸法が49.9mm~50.1mmの範囲で許容される
- 100 +0.2/-0.1 → 100mmの寸法が99.9mm~100.2mmの範囲で許容される
幾何公差の活用
幾何公差は、形状や位置の精度を規定するために使用されます。主な幾何公差には以下のものがあります。
- 平行度(//)
- 直角度(⊥)
- 同心度(◎)
- 位置度(⊕)
幾何公差を適切に設定することで、製造誤差を最小限に抑えることができます。
まとめ
寸法記入は、製造・施工の精度を左右する重要な要素です。以下のポイントを押さえておきましょう。
- JIS規格に準拠し、正しい寸法記入を行う
- 過不足なく、見やすく整理された寸法配置を意識する
- 重複寸法を避け、製造に必要な情報のみ記入する
- 寸法公差や幾何公差を適切に設定し、誤差を管理する
適切な寸法記入を行うことで、設計意図が正しく伝わり、スムーズな製造・施工につながります。製図の基本をしっかりと押さえ、正確な図面を作成できるようにしましょう。
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