機械部品における「はめあい」とは?種類と選定基準も紹介
はめあいとは
はめあい(Fit)とは、機械部品同士を組み合わせる際の寸法関係や許容差のことであり、特に軸と穴の結合部分において重要な要素です。はめあいの適切な設計は、部品の機能性、耐久性、組立の容易さに影響を与えます。
はめあいは、軸と穴の寸法公差(許容できる寸法範囲)によって大きく分けることができます。一般的に、JIS規格(日本工業規格)やISO規格(国際標準化機構)に基づいた基準が用いられます。
はめあいの種類
はめあいは、大きく分けて「すきまばめ」「しまりばめ」「中間ばめ」の3種類があります。
1. すきまばめ(Clearance Fit)
すきまばめは、軸の最大寸法が穴の最小寸法よりも小さくなるように設計され、常にすきま(クリアランス)が確保されるはめあいです。このため、部品の組み立てや分解が容易になります。
主な用途
- 軸受とシャフト
- ガイド部品
- ピンやボルトによる固定
すきまばめの種類
- 緩いすきまばめ(H7/g6 など):自由に動かせる。
- 普通のすきまばめ(H7/h6 など):少しの抵抗があるが回転可能。
- きついすきまばめ(H7/k6 など):しっかりしているが動作は可能。
2. しまりばめ(Interference Fit / Press Fit)
しまりばめは、軸の最小寸法が穴の最大寸法よりも大きくなるように設計され、組み立てる際に圧入(プレスフィット)を必要とするはめあいです。このため、強固な結合が可能となります。
主な用途
- 歯車やプーリーの固定
- 軸とハブの結合
- ベアリングの固定
しまりばめの種類
- 弱いしまりばめ(H7/p6 など):比較的容易に圧入可能。
- 普通のしまりばめ(H7/r6 など):強い固定力を持つ。
- 強いしまりばめ(H7/s6 など):高い強度を必要とする場合に使用。
3. 中間ばめ(Transition Fit)
中間ばめは、すきまばめとしまりばめの中間的な特性を持ち、すきまが生じる場合もあれば、しまりが生じる場合もあります。公差の範囲内でどちらになるかが変動するため、組み立て時の調整が必要です。
主な用途
- 精密機械の部品組み立て
- 軸受のハウジング固定
- 位置決めが重要な部品
中間ばめの種類
- 弱い中間ばめ(H7/js6 など):軽く押し込む程度。
- 普通の中間ばめ(H7/k6 など):少しの力で圧入可能。
- 強い中間ばめ(H7/m6 など):しまりばめに近いが調整可能。
はめあいの設計と選定
はめあいの選定には、以下の要素を考慮する必要があります。
- 機能要求:部品がどのように動作するか(回転、摺動、固定など)。
- 製造精度:使用する加工機械の精度や公差範囲。
- 使用環境:温度変化、負荷、摩耗など。
- 組立・分解の容易さ:メンテナンスや修理を考慮。
たとえば、ベアリングの外輪はハウジングに「すきまばめ」、内輪はシャフトに「しまりばめ」を採用することが一般的です。これは、内輪をしっかり固定しつつ、外輪がわずかに動くことで荷重を分散させるためです。
JIS規格によるはめあい公差
JIS B 0401(ISO 286-1/2)では、公差等級を以下のように分類しています。
軸の公差(例:h6, g6, k6 など)
- h:基準寸法と一致する標準的な軸公差。
- g, f:hよりも小さい(すきまばめ向け)。
- k, m, n:中間ばめ向け。
- p, r, s:しまりばめ向け。
穴の公差(例:H7, G7, K7 など)
- H:基準寸法と一致する標準的な穴公差。
- G, F:Hよりも小さい(すきまばめ向け)。
- K, M, N:中間ばめ向け。
- P, R, S:しまりばめ向け。
公差記号は、例えば「H7/g6」のように組み合わせて使用され、軸と穴の相対的な寸法関係を示します。
まとめ
はめあいは、機械設計において重要な要素であり、適切な選定によって部品の性能や耐久性を大きく左右します。すきまばめ、しまりばめ、中間ばめの特性を理解し、JIS規格の公差を考慮することで、最適な設計が可能となります。
設計時には、機能性だけでなく、製造や組立のしやすさ、メンテナンス性なども考慮し、適切なはめあいを選択することが求められます。