機械設計の図面で用いる投影法【第一角法】と【第三角法】を紹介
機械製図における投影法とは?
投影法とは、機械製図において立体物を平面上に投影して表現する方法のことです。主に第一角法(First-angle projection)と第三角法(Third-angle projection)の2種類があり、地域や業界によって使われる方式が異なります。
製図においては、視覚的な分かりやすさや設計意図の正確な伝達が求められます。そのため、各国や業界で適した投影法が採用されており、国際的な設計業務を行う際には、それぞれの違いを理解することが非常に重要です。
第一角法と第三角法の違い
第一角法(First-angle projection)
第一角法では、物体を投影する際に、観察者から見た方向とは反対側に投影図を配置します。例えば、
- 正面図(主投影面)の下に平面図(上面図)を配置
- 右側から見た側面図を左側に配置
この方法はISO(国際標準化機構)で採用されており、ヨーロッパで主流の製図法となっています。日本でもかつては第一角法が広く使われていましたが、現在はJIS規格により第三角法が主流となっています。
第一角法の図の配置例:
- 正面図(主投影面):物体の正面を描く
- 平面図(上面図):正面図の下に配置
- 側面図(右側面図):正面図の左に配置
第一角法の特徴として、実際の物体の位置と投影図の配置が逆になるため、図面を読む際には一定の慣れが必要です。しかし、ヨーロッパを中心にISO規格として統一されており、多くの国際企業では第一角法の図面を用いることが一般的です。
第三角法(Third-angle projection)
第三角法では、物体を観察者の方向に投影し、投影図をそのままの向きで配置します。例えば、
- 正面図の上に平面図を配置
- 右側面図は右側に配置
この方法はアメリカ(ANSI規格)や日本、カナダで広く使用されており、自動車産業や航空宇宙産業などで採用されています。
第三角法の図の配置例:
- 正面図(主投影面):物体の正面を描く
- 平面図(上面図):正面図の上に配置
- 側面図(右側面図):正面図の右に配置
第三角法は、視覚的に直感的で理解しやすいため、教育機関や製造現場においても普及が進みました。特に、CADの普及に伴い、国際的な設計図面との整合性をとるために第三角法が広く採用されるようになったのです。
なぜ日本では第三角法が主流なのか?
日本では、JIS(日本工業規格)で第三角法が規定されており、基本的にこの方式が採用されています。歴史的には、アメリカの影響を受け、第三角法へ移行した経緯があります。
また、JISでは国際的な取引や設計データの互換性を考慮し、第三角法を推奨しています。これにより、日本国内の製造業や設計業務では、第三角法を基本とした図面が作成されることが一般的です。
しかし、ヨーロッパ企業との取引や国際的なプロジェクトにおいては、第一角法の図面を扱うケースもあるため、技術者は両方の投影法に慣れておくことが求められます。
投影法の活用例
機械部品の製図
- 歯車、軸、ベアリングなどの詳細設計に使用
- 部品の寸法や形状を明確に表現するため、投影法が重要
- 部品同士の組み合わせや干渉のチェックにも活用
建築・土木の設計
- 鉄骨構造の詳細図や施工図で使用
- 大規模建築の断面図や立面図に応用
- 配管や配線ルートの設計にも活用される
製造業での使用
- 製造ラインでの組立図や加工図を作成する際に活用
- 溶接部品や鋳造部品の設計・解析に使用
CADを用いた設計業務
- 3D CADでは、第一角法・第三角法の両方を選択可能
- 国際的な取引では、相手企業の規格に合わせることが求められる
- 自動車や航空機の設計では、第三角法が主流
実務での注意点
図面の表記規格を確認する
- 国際取引の際は、第一角法か第三角法かを必ず確認
- 図面の枠外に「第一角法」または「第三角法」を明記する
CADソフトの設定を確認する
- CADで作成する際、投影法の設定を適切に選択することが重要
- 企業ごとにデフォルトの投影法が異なる場合がある
実際の製造・施工に適した方式を選ぶ
- どの投影法を使うかは、最終的な製造・施工プロセスに影響を与える
- 技術者は、投影法の違いを理解し、適切な方法を選択する必要がある
まとめ
投影法(第一角法・第三角法)は、物体を正確に表現するための製図技法であり、日本では第三角法が主流です。一方、ヨーロッパでは第一角法が一般的であり、国際規格を理解することが重要です。
また、海外の設計図を扱う際には、ANSI(第三角法)かISO(第一角法)かを事前に確認することが重要です。特に、CADを使用する際はどちらの方式を採用しているかを意識しながら作図することが求められます。
このように、投影法の違いを理解して適切な製図方法を選ぶことで、正確な設計図の作成が可能になります。