SS400はどんな性質?一般的な特徴や他の鋼材との比較も紹介
SS400とは?
SS400は、日本工業規格(JIS G 3101)に規定された一般構造用圧延鋼材であり、建築・橋梁・機械構造など幅広い分野で使用される低炭素鋼です。「SS」は「Steel Structure(鋼構造)」を意味し、「400」は引張強さ(N/mm²)の基準を示します。
この鋼材は、適度な強度・加工性・溶接性を兼ね備えており、コストパフォーマンスが優れているため、一般的な構造用途で広く採用されています。
SS400の化学成分と機械的性質
化学成分(参考値)
JIS G 3101ではSS400の化学成分は厳密には規定されていませんが、一般的に以下のような組成範囲を持っています。
成分 | 含有率(%) |
---|---|
炭素(C) | 0.05~0.23 |
ケイ素(Si) | 0.05~0.35 |
マンガン(Mn) | 0.30~0.90 |
リン(P) | ≦0.050 |
硫黄(S) | ≦0.050 |
炭素含有量が低いため、機械加工性や溶接性に優れています。ただし、耐摩耗性や強度が求められる用途では、より高強度の鋼材(例:S45CやSM490)が選択されることもあります。
機械的性質(JIS規定値)
SS400の代表的な機械的特性は以下の通りです。
性質 | 規定値 |
---|---|
引張強さ(N/mm2) | 400~510 |
降伏点(N/mm2) | ≧245(板厚16mm以下) |
伸び(%) | ≧17(板厚16mm以下) |
シャルピー衝撃値 | 規定なし |
降伏点は245N/mm²以上であり、一般的な構造用途には十分な強度を持っています。
SS400の製作方法と表面の違い
SS400の鋼材は、圧延方法や製造過程によって表面の状態や品質が異なります。主な製造方法には、熱間圧延(ホットロール)と冷間圧延(コールドロール)があります。
熱間圧延鋼材(Hot Rolled Steel)
熱間圧延(熱延)とは、鋼を高温(約1,200℃)に加熱し、圧延機で加工する方法です。SS400の鋼材は多くの場合、この熱間圧延で製造されます。
熱間圧延の特徴:
- 表面状態:酸化スケール(黒皮)が付着し、ざらつきがある
- 寸法精度:冷間圧延に比べて精度が劣る
- 機械的特性:加工硬化が少なく、比較的軟らかい
- 用途:建築構造物、橋梁、機械フレーム
熱間圧延材は、溶接や一般的な構造用途に適しているものの、見た目や寸法精度が求められる部品には不向きです。
冷間圧延鋼材(Cold Rolled Steel)
冷間圧延(冷延)とは、熱延鋼板を常温で圧延することで、より滑らかな表面と高い寸法精度を得る方法です。
冷間圧延の特徴:
- 表面状態:滑らかで光沢がある
- 寸法精度:高精度で均一な板厚が得られる
- 機械的特性:加工硬化により強度が増す
- 用途:精密機械部品、自動車部品、家電製品
冷間圧延材は、SS400よりもSPCC(冷間圧延鋼板)が使用されることが多いですが、特定の用途では冷間圧延されたSS400も用いられます。
SS400のサイズと形状
SS400の鋼材は、用途に応じてさまざまな形状と寸法で供給されています。
代表的なSS400の形状とサイズ
形状 | 主なサイズ(mm) | 用途 |
---|---|---|
鋼板(板材) | 厚さ1.2~100、幅600~2500 | 建築、橋梁、機械部品 |
H形鋼 | H100×100~H900×300 | 鉄骨構造、橋梁 |
角鋼(アングル) | L20×20×3~L200×200×15 | 建築補強、フレーム |
丸鋼(バー) | 直径6~200 | 機械軸、ボルト |
パイプ(鋼管) | 外径21.7~508 | 配管、建築 |
SS400の加工性と取り扱いの注意点
切削加工
SS400は低炭素鋼のため、切削性に優れています。ただし、硬度が低いため切削工具の摩耗が少なく、加工しやすい反面、仕上げ面が粗くなることがあります。
切削のポイント:
- 高速回転で切削すると加工熱が発生しやすい
- 刃先のチッピングを防ぐため、適切な切削速度と送りを設定
- 冷却材を使用し、表面の酸化や変色を防ぐ
溶接
SS400は溶接性が良好ですが、厚板を溶接する場合は割れを防ぐために適切な予熱や後熱処理が必要です。
溶接のポイント:
- 一般的な溶接方法(アーク溶接、TIG溶接)に対応
- 厚板は予熱(100~200℃)を行い、急冷を避ける
- 防錆処理を行い、溶接部の腐食を防ぐ
防錆処理
SS400は耐食性が低いため、屋外使用時には塗装やメッキ処理が推奨されます。
防錆方法の例:
- 塗装(建築鉄骨など)
- 亜鉛メッキ(ガードレールなど)
- 防錆油処理(輸送中の腐食防止)
SS400と他の鋼材の比較
SS400は一般構造用鋼材としては標準的な鋼種ですが、特定の用途に応じて他の鋼材と比較されることがあります。
鋼材 | 主な特徴 | 用途 |
---|---|---|
SS400 | 一般的な構造用鋼材。加工性・溶接性が良いが耐食性は低い | 建築、橋梁、機械部品 |
S45C | 炭素鋼で硬度が高く、熱処理が可能 | シャフト、歯車 |
SM490 | 高強度鋼でSS400よりも強度が高い | 高荷重構造物、クレーン |
SN材 | 溶接構造用鋼材で、靭性が高い | 建築、耐震構造 |
SUS304 | ステンレス鋼で耐食性が高い | 食品機械、化学プラント |
まとめ
SS400はJIS G 3101で規定された一般構造用鋼材であり、強度・加工性・コストのバランスが良く、建築・橋梁・機械分野で広く使用されています。
主なポイント:
- 熱間圧延材は一般構造用途に適し、冷間圧延材は高精度部品に向く
- 加工性・溶接性が良好で、幅広い形状・寸法で供給される
- 耐食性が低いため、屋外使用時は防錆処理が必要
用途に応じた適切な選定と加工を行うことで、SS400の特性を最大限に活かすことができます。