鋼材・素材

機械構造用炭素鋼の炭素量による影響や代表的な鋼種・用途を紹介

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機械構造用炭素鋼(JIS G 4051)は、炭素(C)の含有量によって低炭素鋼・中炭素鋼・高炭素鋼の3つに分類され、それぞれの特性や用途が異なります。炭素量が増加すると、硬度・強度が向上する一方で、延性・靭性・溶接性が低下するというトレードオフがあります。

この記事では、炭素鋼の炭素量の違いによる鋼種の分類や炭素量による性質への影響、用途の例などについて紹介します。

炭素量と鋼の分類

分類炭素量(%)代表鋼種特徴用途
低炭素鋼0.10~0.30S10C, S20C, S25C, S30C軟らかく、加工性・溶接性が良い。熱処理の効果が小さい。構造材、ボルト、ナット、パイプ
中炭素鋼0.30~0.60S35C, S40C, S45C, S50C, S55C強度と靭性のバランスが良く、熱処理による強度向上が可能。シャフト、歯車、ボルト、クランクシャフト
高炭素鋼0.60~S60C, S65C, S70C硬く、耐摩耗性が高いが、脆くなる。熱処理で更に硬化可能。刃物、ばね、工具、軸受

炭素量の増加による影響

強度と硬度の向上

炭素量が増加すると、引張強さや硬度が向上 する。

例:S10C(低炭素鋼)は約300 MPa、S50C(中炭素鋼)は約650 MPaの引張強さを持つ。

しかし、炭素量が増えると、靭性(粘り強さ)は低下し、衝撃に弱くなる。

延性・靭性の低下

炭素量が多いほど、鋼材の硬化が進み、伸びや絞り(延性・靭性)が低下 する。

低炭素鋼(S10C~S25C)は曲げ加工しやすいが、高炭素鋼(S60C以上)は割れやすくなる。

溶接性の低下

炭素量が増えると、溶接時に割れが発生しやすくなる(特に硬化組織の形成による)。

S10CやS20Cは溶接性が良いが、S45C以上では事前・事後の予熱が必要になる。

熱処理の効果

炭素量が増加すると、焼入れ・焼戻しによる強度向上の効果が大きくなる。

S45C(中炭素鋼)は熱処理で硬度を向上できるが、S10C(低炭素鋼)では焼入れ効果が少ない。

S60C以上の高炭素鋼では、焼入れすると非常に硬くなるが、靭性が低くなるため、適切な焼戻しが必要。

炭素量別の適用例

低炭素鋼(S10C~S30C)

例:自動車のフレーム、配管、一般構造材

加工しやすく、溶接性に優れる

熱処理なしでも使用可能

中炭素鋼(S35C~S55C)

例:シャフト、ボルト、歯車、クランクシャフト

強度と靭性のバランスが良く、焼入れ・焼戻しで強度を向上可能

溶接には注意が必要

高炭素鋼(S60C~S70C)

例:ばね、刃物、工具、軸受

硬度と耐摩耗性が非常に高い

溶接や冷間加工は困難で、主に熱処理を施して使用

まとめ

炭素量が増えると、強度・硬度は上がるが、延性・溶接性は低下 する。

  • 低炭素鋼(0.10~0.30%):加工性が良く、溶接しやすいが強度は低め。
  • 中炭素鋼(0.30~0.60%):強度と靭性のバランスが取れており、熱処理が可能。
  • 高炭素鋼(0.60%~):硬くて耐摩耗性が高いが、脆くなりやすい。

機械部品の設計では、求める強度・加工性・熱処理の適用性を考慮して適切な炭素量の鋼材を選定することが重要です。

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