鋼材・素材

アルミ合金はどんな性質?一般的な特性や系統・用途も紹介

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アルミ合金とは

アルミ合金とは、アルミニウムを主成分とし、他の金属元素を添加して特性を向上させた合金のことを指します。純アルミニウムは軽量で耐食性に優れていますが、強度が低いため、工業用途には適しません。そのため、銅、マグネシウム、シリコン、亜鉛などを添加し、強度、耐摩耗性、耐食性、加工性などを向上させたアルミ合金が広く使用されています。

アルミ合金の分類

アルミ合金は、製造方法により「鋳造アルミ合金」と「展伸アルミ合金」の2つに大別されます。

鋳造アルミ合金

鋳造アルミ合金は、溶かした金属を鋳型に流し込んで成形する合金です。成形性が良く、複雑な形状の部品を作るのに適しています。代表的なものには、Al-Si系(シリコンを含む)合金があり、エンジン部品や機械部品に多く使用されます。

展伸アルミ合金

展伸アルミ合金は、圧延や押し出し、鍛造などの加工を行うために作られる合金で、用途に応じて高強度なものも存在します。航空機や自動車の部品、建築材料などに広く使われています。

アルミ合金の系統分類

アルミ合金は主に国際的な分類規格(AA規格)に基づき、1000系から8000系までの系統に分類されます。また、熱処理の有無により「熱処理型」と「非熱処理型」に分けられます。

  • 熱処理型(2000系、6000系、7000系):強度を高めるために熱処理を施す。
  • 非熱処理型(1000系、3000系、4000系、5000系):加工硬化により強度を向上させる。

1000系(純アルミニウム系)

純度99%以上のアルミニウムで、耐食性と導電性が高いが、強度が低いため、電線や化学装置に使用されます。

2000系(Al-Cu系)

銅を主成分とする合金で、強度が高いものの耐食性が低いため、防食処理が必要です。航空機や自動車の構造材料に使用されます。

3000系(Al-Mn系)

マンガンを含む合金で、耐食性と加工性に優れ、飲料缶や屋根材などに使用されます。

4000系(Al-Si系)

シリコンを含み、耐摩耗性が高く、エンジン部品や自動車のブレーキディスクなどに使用されます。

5000系(Al-Mg系)

マグネシウムを含む合金で、耐食性が高く、溶接性にも優れています。船舶やタンク、建築用材料に用いられます。

6000系(Al-Mg-Si系)

マグネシウムとシリコンを含む合金で、強度と耐食性、加工性のバランスが取れており、自動車や建築材料に広く使われます。

7000系(Al-Zn系)

亜鉛を主成分とし、高強度で航空機やスポーツ用品に利用されます。

8000系

特殊用途向けの合金で、電線やアルミ箔などに使用されます。

アルミ合金の特性と利点

アルミ合金は次のような特性を持っています。

  • 軽量性:アルミニウムの密度は約2.7g/cm³であり、鉄(約7.8g/cm³)と比較して約3分の1の軽さ。
  • 耐食性:自然に酸化被膜を形成し、腐食に強い。
  • 加工性:圧延、押し出し、鍛造など様々な加工が可能。
  • 導電性・熱伝導性:電線やヒートシンクに利用可能。
  • リサイクル性:再生が容易で、環境負荷が少ない。

アルミ合金の用途

アルミ合金は幅広い分野で使用されています。

自動車産業

燃費向上のために軽量化が求められ、ボディパネル、エンジン部品、ホイールなどに使用されています。

航空宇宙産業

軽量かつ高強度な特性を活かし、航空機の構造材料に使用。例えば、ボーイング777の機体の約70%はアルミ合金で構成されています。

建築・インフラ

窓枠、屋根、橋梁、タンクなどに使用。さらに、鉄道車両の外装や高速道路の防音壁にも利用されています。

電気・電子分野

電線、ヒートシンク、電子機器の筐体など。さらに、再生可能エネルギー分野において、ソーラーパネルのフレームや風力発電の部品にも使用されています。

食品・包装

アルミ缶や食品包装材として活用。特にアルミホイルは食品保存に広く用いられています。

医療・化学産業

MRI機器の部品、義肢、薬品の包装などに使用されています。アルミの非磁性特性が医療機器に適しています。

アルミ合金の課題と今後の展望

アルミ合金は多くの利点を持つものの、以下のような課題もあります。

  • コスト:鉄よりも高価であるため、大量生産品には制約がある。
  • 強度の限界:一部の用途では鉄やチタンほどの強度が求められる。
  • 異種金属接合の課題:鉄とアルミの接合では、熱膨張係数の違いや金属間化合物の生成が問題となる。

近年では、ナノ材料技術や新しい合金開発が進められ、強度向上やコスト低減が期待されています。また、リサイクル技術の発展により、持続可能な社会への貢献がさらに進むと考えられます。

まとめ

アルミ合金は、軽量性、耐食性、加工性などの優れた特性を活かし、自動車、航空機、建築、電気・電子、食品包装など多岐にわたる分野で利用されています。今後も新しい合金開発やリサイクル技術の向上により、さらなる発展が期待される重要な材料です。

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